今日は、3月14日。榊先生、お誕生日おめでとうございます!!・・・だけじゃなくて。今日は、バレンタインデーに貰った人がお返しをする日だ。
そこで、私は思ったのだけど。私も先月は向日先輩に渡した。だけど、向日先輩も私に渡してくれた。・・・こういうときって、お返しは必要ないのかな?でも、貰ったのは事実だし・・・。
というわけで、私は今日、もちろん先月とは違う物を作って持ってきた。向日先輩と会えるのは、確実だしね!

本当、付き合えるようになってから、すごく幸せ。毎日が楽しい。・・・そのお礼の気持ちも込めて、今日はやっぱりお返しをした方がいいよね!

それに、今日会えるのは部活があるから、という理由じゃない。なんと、今日はデートに行くお約束・・・!!



「わっ、もう来てたのか!ゴメン、待たせたな。」

「いえ、大丈夫ですよ。それに、まだ約束の時間にはなってませんし。」

「いやいや、そういう問題じゃなくって。やっぱり、男が先に来とくべきだと思うわけ。」

「そうですか?」

「そりゃあ、俺を待ってくれてる、ってのも可愛くていいけどさ。男としては、好きな子を待たせたくないって思うんだよ。だから、ごめんな?」



それは、きっと女の子だって思うことだ。女の子だって、好きな人を待たせたくないと思う。・・・と言いたいところだけど、そんなことを言うのは少し恥ずかしいので、うんと頷くだけにした。
・・・それにしても、向日先輩はよく照れずに、こういうことを言えるなぁと思った。私のことも可愛いだなんて・・・・・・こっちの方が照れてくる。でも、向日先輩はいつもこんな感じ。・・・何だかズルイよね、私だけが余裕無いみたいで。
だけど、そんな先輩のことが好きだから。文句を言ったって仕方がない。・・・それに、本当は文句なんて無いしね。



「んじゃ、そろそろ行くか!」

「はい!」



だから、向日先輩にそう言われて、私も笑顔で返事をした。
今日は映画を見て、近くのお店でご飯を食べる予定。そして、私の中では、食事の後ぐらいにバレンタインのお返しを渡せばいいかなぁという予定。

そう考えて、向日先輩へのお返しは持ったまま、映画館へと向かった。
ちなみに、今日見る映画のジャンルはコメディーで、決して甘い甘いラブロマンス系ではない。・・・そんなものを向日先輩と見るのは、恥ずかしすぎる。・・・ということを向日先輩に説明するのも恥ずかしいので、そんなことは言っていないけど。とにかく、2人ともが楽しめるだろうということで、コメディーの作品を見ることになった。



「映画館と言ったら、ポップコーン、だよな!」

「ふふ、そうですね。」

「あぁー、でも、この後飯も食うからなぁー。・・・2人で1つ、でもいいか?」

「はい。」

「別に買わなくてもいいんだけどよー。ポップコーンを買わねぇと、映画館に来た意味ねぇって感じがするっつーか・・・。なんか、勿体ねぇ気がするんだよなぁー。」

「映画館はそれを狙ってるんでしょうね。」

「だよなー。俺、まんまと引っ掛かってるよな。」

「でも、そう思ってるのは向日先輩だけじゃないですよ。」

「それもそうだな。・・・よし。は飲み物何にする?俺、買って来っから。」

「いえ!私も行きます。行ってから、選びたいので・・・。」

「そっか。んじゃ、一緒に行こう。」



本当は飲み物なんて、何でも良かった。だけど、少しでも向日先輩と一緒に居たかったから・・・。ラブロマンスを見るよりも、こんな考えをした自分の方がよっぽど恥ずかしいかもしれない。
そんなことを考えながらも、私たちは売り場に辿り着き、目当てのポップコーンと飲み物を買った。・・・と言うか、買ってもらった。席に戻ってから、お金を返そうとしたけど、それは断られてしまった。



「ですが、先輩・・・。」

「いいから、いいから。さすがに、飯を奢ることはできねぇと思うからさ。ここぐらい、ちょっと格好つけさせてくれって。」

「・・・いいんですか?」

「本当は飯だって、映画だって、何だって先輩の俺が奢ってやりてぇところだけど。まだ中学の小遣いじゃ、そんなことはできねぇからな。だから、これぐらいさせてほしいんだ。な?頼む。」

「・・・それじゃ、お願いします。ありがとうございます。」

「気にすんな。男はこういうことぐらいで自己満足できちまう、つまんねぇ生き物なんだよ。」



そんなことないと思うけれど、私に気を遣わせないよう、向日先輩が言ってくれた言葉だから、私も何も言わずに笑っておいた。そしたら、向日先輩も笑ってくれて・・・。何だか、こうやって一緒に笑える時間って、すごく大事だなぁと思った。そういう意味では、映画のジャンル選びも間違ってはいなかったみたい。

見てみると、作品自体も評判通り、面白い内容で・・・。やっぱり、この映画を選んで良かったと思う。



「いやー、面白かったな・・・!」

「はい!」

「俺、思わず吹き出しちまったもん。」

「私も、です。アレですよね?あの、最初の方の・・・・・・。」

「そうそう!まさか、あんな序盤で笑わされるとは思わなかったぜ。」

「ですよね!」



そうやって、映画の感想を軽く話し合いながらも、次に向かうお店を選んだ。
店に入ると、店員さんは、私たちを2人用のテーブルへ案内してくれた。・・・それは当たり前のこと。でも、その席を見るとあらためて、今日は2人きりなんだという認識をさせられて。何だか、少し嬉しかった。



「んー・・・。どっちにすっかなぁ・・・。」

「どっちってことは、2つで悩んでるんですか?」

「うん、そう。・・・は?決めた?」

「いえ・・・まだです。」

「そうか。ま、俺もまだだし、ゆっくりでいいからな?」



正面に座っている向日先輩と同じメニューを眺める。その嬉しさを味わいすぎて、正直あまり考えられなかった。だから、慌てて返した。



「ちなみに向日先輩は、何と何で悩んでるんですか?」

「ん?俺?・・・俺は・・・・・・これと・・・これ。」

「あ!それ、いいですね。」

「だろ?でも、こっちも捨てがたくってな・・・。」

「じゃあ、私はこれにしますから、向日先輩はこっちを頼んで・・・食べ比べてみませんか?」

「・・・いいのか?」

「いいですよ。私もどっちも美味しそうだと思いましたし。」

「マジで・・・?」

「はい!」

「ありがとよ、。」

「いえいえ。これぐらい。」

「なんか、なっさけねぇ、俺。」



向日先輩は笑いながらそう言った。向日先輩のことだから、後輩に譲ってもらうなんて、というようなことを思ったんだろう。だけど、私はこのまま選ぼうとしても、向日先輩が気になって、早く決めることはできなかったと思うし。それに、本当に向日先輩が選んだ物は美味しそうだと思ったし。これが1番いい選択なのだと思う。あと・・・交換してみるのも楽しそうだし。とは言えないので、また私も笑うだけにした。
頼んだ物を待つ間も、ちっとも遅いなんて感じないぐらい、向日先輩と楽しく過ごした。もちろん、食べるときだって楽かったし、交換するのも・・・・・・うん、ちょっと緊張はしたけどね。
さてと。そろそろ、準備しなくちゃ。



「ご馳走様でした。」

「あ〜!食った、食った。美味かった、っと。」

「向日先輩。」

「どうした?は美味くなかった、のか?」

「いえ!そんなことはなかったです!とても美味しかったです。」

「よかった。」

「はい。それで、ですね・・・。」

「?」



不思議そうにしている向日先輩を余所目に、私は自分の鞄から『お返し』を取り出した。



「はい、向日先輩。」

「・・・それは・・・・・・?」

「バレンタインのときのお返しです。」

「え?」

「今日はホワイトデーですから。」

「いや、うん、そうなんだけど・・・。」

「向日先輩?」

「あー・・・でも、うん。そうだよな。うん、は間違ってない。サンキュ、。」

「いえ。」

「じゃあ・・・。」



そう言いながら、今度は向日先輩も鞄から何かを取り出し、テーブルに置いた。



「あれ?もしかして・・・向日先輩も??」

「だって、俺も貰ったじゃん。」

「そうですけど・・・。何だか、可笑しいですね。」

「まぁな。」



そう言って、私たちは笑い合った。
・・・今日は、2人で笑った時間がいつもより多かった。いつまでも、そうやって2人で楽しく過ごせたらいいな。それこそ、私たちの髪が今日のイベントと同じ色になったときも・・・・・・なんてね。









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今年は『逆チョコ』と言われていましたので、「じゃあ、ホワイトデーはどうすんの?」という疑問から、この話が生まれました!
私としては、こういう付き合いたての頃に、どっちもがお返しをしちゃう、そんな微笑ましく、ほのぼのとした感じが理想だったのです。・・・実際はどうするんでしょうねー?(笑)

ただ、今回はそのお返しを渡し合う部分しか考えていなかったので、間の話がめちゃくちゃですね・・・(滝汗)。と言うか、もうサクサク進んじゃいました・・・orz
男前向日さんを!!と思ったら、ちょっと欲張ってしまって・・・;;申し訳ないです・・・!!

('09/03/14)